平成28年全日本柔道選手権大会観戦

4月29日、全日本柔道選手権大会を観戦するために日本武道館まで一人で出陣。リオデジャネイロ五輪100kg超級日本代表選考も兼ねているという事情もあり大変楽しみにしていた。全日本を生で観戦するのは小学校高学年の時(多分2003年)以来でその時は棟田選手のサインを書いてもらった。俺自身日本武道館で何度か試合をした経験もあり、小学6年生の頃は団体戦で4回戦まで進みバルセロナ五輪金メダリスト・吉田秀彦の吉田道場(東京)に負けたという思い出がある。

無差別級なので重量級がメインで、パンフレットのデータのよると出場の平均身長は181センチ、平均体重は112.5キロらしい。毎年、永瀬貴規、大野将平森下純平、吉田優也といったトップクラスの軽量級中量級選手が出場するのだが今年は残念ながら見れなかった。

事前に組み合わせを見た感じだと七戸、原沢、上川、王子谷が本命。ベテランだと西潟、高橋など。若手注目株は小川直也の息子であり現明大生の小川雄勢。このあたりで優勝者が出るだろうと予想していた。個人的には技のキレる王子谷選手に頑張ってほしいと思っていた。


会場は時間と共に席が埋まっていった。ガタイから判断する限り柔道関係者が非常に多かった。歓声や拍手やどよめきが大きく、こうした盛り上がりの中で観戦することに現地まで赴く意味を感じた。観客には外国人が多くいた。俺の後方にも外国人家族とその友人らしき集団がいて俺の耳には常にフランス語が聞こえていた。一本の度に歓声を上げていた。10時半開幕、11時頃に試合開始。終了時刻は17時半頃。一瞬たりとも見逃すまいと思い6時間以上も試合を集中して見続けていたが、ここまで気合を入れて観戦したのは俺以外いないんではないか。以下は印象に残った試合。

・2回戦、原沢vs垣田
身長差17センチ、体重差33キロの対決。垣田は終始右袖を原沢に取らせず、内股を警戒していた。そして組手が不十分でも担ぎ系を中心に技を繰り出していた。結果的に原沢が指導差で勝利したが、垣田がポイントをとられず敗北したことは意義深い。この垣田は1回戦で吉永を背負い投げで綺麗に投げ、また過去の全日本でベスト3に入っている(しかも原沢から技ありをとった)など実力者なのでこれからは要注目の選手である。

・4回戦、王子谷vs加藤
加藤が完璧なタイミングで肩車らしき技に入ったところ体重を利用して返されて有効をとられた。同階級ならポイントをとれるくらいの入りだったが体重で押しつぶされていた。それ以外は互角の攻防。巴投げで王子谷を浮かせたのが印象的だった。加藤の技師っぷりに感銘を受けたのか王子谷は礼の後に加藤のところに駆け寄り握手を求めていた。

・準決勝1試合目、王子谷vs七戸
序盤王子谷はなかなか技が出せずに中盤あたりで指導3。そこで思いっきり大外刈り入ったところ技あり。そして再び同じ大外巻き込みで完璧な一本勝ち。

・準決勝2試合目、原沢vs上川
上川の支えつり込み足や払い腰がキレていた。原沢は何もできずにいた。正直あまり内容は覚えていない。結果、旗3本で上川の勝利。原沢が試合後頭を垂れながら畳を降りていったのが印象的だった。

・決勝、王子谷vs上川

上川は既に疲れていて、対照的に王子谷は前試合からノッているように見えた。内容は大外刈りの連発。上川も大外返しで応酬するもポイントを取るまでではなかった。大外刈りの度に場内に大きな歓声がどよめいていた。優勝後の王子谷のインタビューで印象的だったのは「大外を3回続けてやり大外の返しを狙っていたのが分かったので、ここで支えつり込み足をしたらどうなるかなと思いました」という発言。

・番外 九州予選準決勝、青山vs垣田
直接見てないが、パンフレットによると九州予選で174センチ90キロの垣田が186センチ160キロの青山から払い腰で一本勝ちしたとある。ちょっと想像つかない。といっても一昨年に青山は吉田優也に背負い落としで一本とられているのであのような感じか。

・全体的な総括
俺自身が小柄ということもあり、体の小さい選手が大きい選手に対してどういう組手・技・試合運びをするのかについて勉強しようとしてそこに注目した。やはり全日本に出場するだけあって身長170センチ前半、体重90キロ前後の小さい選手でも大型選手に簡単に負けない試合展開をしていた。組ませない、自分はどこでもいいから組む、奥襟をとられても防御に徹して安易に技をかけない、動いて組手を切るなどといったテクニックが間近で見れて参考になった。特に上手かったのは174センチ93キロの加藤博剛選手。2012年に全日本を制しているだけのこともあり、巴投げ、寝技、肩車、背負いなど技が多彩で且つ上手く、間違いなく大会一のテクニシャンだった。そして彼を凌いだ同90キロ級の西山将士選手がどれだけ強かったのかが分かる。

リオ五輪柔道100kg超級代表内定者
今大会3位に終わるもIJF(International Judo Federation)世界ランキング2位という確かな実績を持つ原沢に決定した。俺としては最近の実績重視の強化委員会の決定に対して賛同するが、世間的には「全日本を選考会に位置付けた意味がない」「王子谷が出れないのはおかしい」という声が多かった。あのフランスの絶対王者テディ・リネールを倒さない限り金メダルは厳しい。リネールは身長が高く原沢の得意な内股が決まるとも限らないので、どういう対策をとるのか楽しみである。