2012年に読んだ本ベスト10

1位「金閣寺三島由紀夫(10月)
三島らしからぬ作品。三島作品の登場人物は大抵ハイスペックで人工くささ・人為的な感性を軸としている感が拭えないが、この小説に限っては愛を含まない徹底した自己の葛藤を主題にしている点で異彩を放っているように思えた。僕にとっては完全無欠な作品、今まで読んできた全文学作品(少ないけど)の3本指に入る。

2位「水中都市・デンドロカカリア」安部公房(6月)
「変形」の伴う短編集。カフカの二番煎じのように言われることがあるが、逆に僕にとって安部公房カフカの上位互換。「手」「デンドロカカリア」は僕の中では傑作である。

3位「自由からの逃走」エーリッヒ・フロム(6月)
ナチスナチス支持者の精神分析。僕の心理学に対する見方がこれ以前・これ以後で明確に変わった。かなり的を射た分析。

4位「死者の奢り・飼育」大江健三郎(8月)
大江健三郎の国内での評価は低いが、僕は個人的に好き。ストーリー性重視の「芽むしり仔撃ち」とは異なり、静的で観念的な作品が多かった。

5位「密会」安部公房(8月)
「追う者」と「追われる者」の転換、視覚・聴覚の揺さぶり、「異常」の相対化など、発想が斬新すぎて感動するレヴェル。

6位「異邦人」カミュ(11月)
翻訳ものなので評価が下がったが、内容自体は良かった。僕が自分独自と思っていた発想がカミュに書かれていた。

7位「権利のための闘争」イェーリング(4月)
読んだのが4月なので細かいことは覚えていないが、「係争物に関する闘争」といものを個人の内面にまで敷衍した議論や「一個人が権利を守ること」を国家共同体と結び付ける議論が印象的で面白かった。

8位「国防」石破茂(10月)
防衛大臣・現自民党幹事長の石破茂氏の文庫落ちした本。日本の国防について対談していた動画をようつべか何かで見て以来石破氏は政治家として気になっていた。

9位「友達・棒になった男」安部公房(8月)
「闖入者」「棒」と内容的に同じなので評価されたが、戯曲になると再び新鮮な気持ちで読める。

10位「大衆教育社会のゆくえ」苅谷剛彦(3月)