ブラジリアン柔術事始

念願のブラジリアン柔術を始めることになった。

今までの俺は寝技を全くやらなかったため知識が小学生の頃から更新されず、上四方や袈裟固めや横四方のような基本的な固技しかできないのが現状だ。関節技と絞め技に関してはほとんど知識がない。担ぎ系、捨て身系中心の立ち技一本に絞り寝技は持ち込まないし持ち込ませないスタイルをとっている。しかし立ち技で相手を投げてそのまま上から相手を制す、若しくは相手を下から引き込み相手を制すという勝負の完結性を求めると必然的に寝技に行きつく。一対一の最後は寝技で極めなければならないという観念を捨てることはできない。巴投げや隅返しで引きつけて寝技に持ち込み、腕十字や送襟絞や腕緘で降参させる渋さは魅力的である。また相手が巨漢であっても正しい手続きで腕を極めれば一撃で沈めることができるという知的な側面がある。筋力とテクニック、立ち技と寝技の総合性を磨くことで、シナジーを含んだ強さを纏うことができる。目指すは柔道と柔術の二刀流である青木真也、小室宏二、中井祐樹など。跳関十段の異名を持つ青木真也は、長島☆自演乙☆雄一郎戦やその他各種試合における態度のせいで素人からプロ格闘家までアンチを非常に多く持つが、極めを中心とする寝技技術は天下一品である。「60億分の1の男」で知られる人類最強の呼び声高いエメリヤーエンコ・ヒョードルは柔道・サンボにバックボーンを持っており、"氷の拳"を振りかざしたと思ったらクールに相手の腕を極めることもよくある。またUFCなど総合格闘技の舞台でグレイシー一族が活躍したこともあり、ブラジリアン柔術≒寝技は「最強の格闘技としての名声を守り続けている」(wikipedia)。

ブラジリアン柔術に限らず何か他のことを始めようとかねがね思っていたのだがそもそも他の種目も始めたいと思った動機は、柔道参段取得まで2年ほど期間を空けなければならず今と同じテンションを保てる気がしないというところが大きい。木村政彦を一時圧倒した阿部謙四郎塩田剛三などの豪傑を輩出し、無駄な力を用いず合理的な動きで相手を制する合気道も少しは考えたが、非実戦性・非競技性というところで興味がやや劣る(しかし合気道はいずれ始めようと考えている)。極真空手やボクシングのような打撃系は視力と度胸が足りない。剣道は武器を持っているので方向性が異なる。サンボやレスリングは立ち技重視で柔道とコンセプトが似ている上にジムが少ない。寝技に興味を持った大元は『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を読んだことにあるが、以上のような消去法においても柔術が自ずと浮かび上がってくるのだ。現実的な障壁は練習時間と月謝・道着代の捻出であるが、それを差し引いてもブラジリアン柔術を始めることに宿命を感じている。

先日ジムに見学と体験練習のために訪問した。体験練習では打ち込みとスパーリングに参加させてもらった。スパーではルールが分からないまま柔道の寝技の要領で行ったため知らない間にスイープで2点、亀になったところをバッググラブで4点とられていた。実際に他の人のスパーを見てみると、足を手のように使う人が多かった。また尻を滑らせるように動かすことで相手との適切な距離を置くための体の位置を調整しているのも特徴的であった。寝技素人の俺とは明らかに動きが違うことは容易に理解できた。

ジム内にBGMがかかっている、タトゥーの人も金髪の人もいるという点でジム内での自由度が高く、保守的な柔道と異なる(特にタトゥー率は高い)。相手に敬意を払い礼儀さえ守っていれば、ガチガチに縛られた暗黙のルールや礼儀作法がない緩さが許されるのは、さすがブラジル発祥の格闘技である。

目下、腕挫十字固、腕緘、三角絞、(回転式)送襟絞、十字絞、腰絞などの基礎的な技を研究していき、スイープやパスガードやガードの細かい知識はスパーの中で経験を積み重ねていく。小室宏二に影響を受けた青木真也宜しく、小室流の闘い方を理想としていきたい(註:小室先生は立ち技も巧い)。とりあえず目標は青帯。