2016年6月10日覚書

俺は最近、外を出歩いている際に道行く人の顔つき・姿勢を見ることにしている(見ると言っても瞬間的なので不快を与える程のものではない)。特にサラリーマン風若しくは中年風の男性に焦点を当てていて、その者がどういった"人物"なのかを外面上瞬時に推測したいからだ。道を歩いている際の目つき・口角の位置・頬のこけ具合、電車の中で立っている際の体の重心・顔の傾き具合など。電車に乗り込むや否や座席に直行し背中を丸めながら呆けた面でスマホゲームに興じる者と、左右にバランスよく体重をかけ仁王立ち気味に直立し顔を45度傾けながら眉間を適切に寄せて国際政治情勢または人体構造に関して読書する者、将来俺が30歳になった時にどちらで在るべきかという問題意識が芽生える。

「人間になりてぇ」と「泣くな、泣くな、そんなことで」を目当てに注文した長渕剛のアルバム『Captain of the Ship』が先日届いた。元々は1990年頃、30代、チンピラ期からインド期にあたる長渕剛に嵌ったこともあり、ドストライクの『Captain of the Ship』は俺にとって珠玉のアルバムである。CD音源も良いのだが、やはりライブ映えする歌手であるとつくづく思う。ステージに立つ30代の長渕剛は、表情一つ一つをとっても全く飽きない。熱情・温情・哀愁・苦悶・憔悴が混じり合ったアンバランスな表情であるが、なぜか見ていて安心できる顔をしている。この点はOASIS(特に20代〜30代前半のNoel Gallagher、20代のLiam Gallagher)とも共通である。

増税延期が発表された。赤字国債に依存せず、20年度までに基礎的財政収支を黒字化すると同時に、社会保障を強化すると主張しているが、それは日本経済が大きく成長するという実体が不安定な強い仮定の下でしか実現可能でない。その上国際金融・政治はグローバル化故に大きなリスクを抱えており日本も影響は免れず、G7での発言から見て取れるようにそれを安倍首相は自覚している。年金受給者に対しての優遇措置を引き締めて全階層に対して年金課税を強化してもなお難しいというのが、ゼミ時代に俺が読んだ論文におけるシミュレーションの結果である。就活の面接でも日本の財政はどうなるかと年配面接官に何度か尋ねられたが、目下の財政逼迫においては少子高齢化が諸悪の根源であり高齢者からも取らないとヤバいと思いますとオラついた返答をし、その度にしかめっ面をされた。

ただ別に俺は、安倍首相や黒田日銀総裁がダメで、今後救世主的リーダーが世界や日本に現れて我々を救ってくれると思ってる程の小市民的なおめでたい思考を持ってるわけではない。かと言ってもうダメだと投げ出しているわけでもない。人口動態(少子高齢化etc)や政治的力学(米中露産油国との関係etc)や市民の嗜好・価値観(独身or子無しetc)など様々な制約がある中で政策的にベストを尽くすのみであると考えている。

トヨタが総合職の社員に対する在宅勤務の制度を大幅導入するらしい。情報技術が飛躍的に発展した現代において、時間も場所も画一的に労働に従事する自体奇妙に感じてていたし、サラリーマンが場所も時間も分散するような制度改革が浸透してほしいと朝の通勤ラッシュにおける途轍もなく窮屈な満員電車の中で常に思っている。在宅勤務においては企業の情報漏洩が最も重いリスクになるわけだが、トヨタはそれを防ぐクラウドサービスを利用することで端末に情報を残さないようにするらしい。この先時間にも場所にも制約されない働き方が進展すると考えられるが、労働者階級として社会の歯車になる俺には大歓迎である。

中学生にですら寝技で負ける寝技弱者として定評のある俺(立ち技が強いとは言っていない)なので、最近はブラジリアン柔術への興味が強い。一対一のバーリトゥードをシミュレートすると、立ち技で有利なポジションをとって絞め技や関節技に速やかに移行し相手の戦意を喪失させることが最も分かりやすい。小柄テクニシャン系肉体的総合力を身につけるためには寝技の修行が不可避であると痛感するこの頃である。

知性にとって読書とは肉体にとっての筋力トレーニングのようなものだ(A is to B what C is to D構文)という俺オリジナルの哲学の下、知的ベンチプレス20kg前後と推測される程の非力で情けない脳味噌を鍛え上げるため、梅雨のこの時期に先人達の偉大な思想である"晴耕雨読"に倣い、最近は本を読むようにしている。

読み進めている本
『使える地政学』(佐藤優)
『資本主義の極意』(佐藤優)
『武士道』(新渡戸稲造)
『自分ということ』(木村敏):浪人時代に塾講師から薦められた木村敏先生

これから読むもの
『沈みゆく帝国  スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』(ケイン岩谷ゆかり):大学某講義の課題図書

中断しているもの
ツァラトゥストラ』(ニーチェ岩波文庫):やはり訳文は読みにくい