本屋の歩き方/好奇心の広がり/書籍の電子化

本屋に入ってからの歩き方は人それぞれ異なり個性が出るため、俺にとって非常に興味深いトピックである。本屋は人間社会におけるあらゆる分類に対しての網羅性が高いため、或る人がどういうテーマに関心を持つかということはその人たらしめる固有性に直結すると俺は考える。

俺の場合はまず中公新書岩波新書講談社現代新書ちくま新書を中心とした新書を物色して、それ以外にも平台に積まれた新書も見て新刊をチェックする。続いて大抵の場合その隣にある文庫コーナーでは新潮文庫岩波文庫ちくま文庫あたりを中心に見て、それ以外の出版社はほぼ見ないことが多い。通常、文庫にはあまり時間をかけない。専門書のコーナーでは社会科学周辺で経済、金融、そして人文科学周辺で思想・哲学。たまに歴史や理系書などが加わる。金融から近隣にある投資関連の本に目を移すこともあるが、FX・株はどれも同じようなことを書いてあるので瞥見程度。思想・哲学から近隣の宗教や心理学に行くこともある。専門書はテーマがより細分化されていることが多く、背表紙のタイトルを見るだけで勉強になるので時間をかけることが頻繁にある。語学コーナーでは英語が中心だが、スペイン語を見ることもある。棋書コーナーでは将棋の定跡研究本や序盤研究本(主に相居飛車と対抗型)の新刊をチェックして、トッププロの名局集や棋譜を眺める。スポーツコーナーではトレーニングに関する本を見ることが多いが、中でも体幹レーニングにはあまり興味はなくマシントレや自重トレを手に取ることが多い。またサイクリングなどのアウトドアの解説書もたまに立ち読みする。雑誌コーナーでは自動車、近代柔道、経済誌ビジネス誌将棋世界あたりは必読として位置付けており、後は表紙やタイトルを見て判断する。スポーツ雑誌のNumberはラグビー特集を読んで以来好きになりつつある(野球・サッカー重視は欠点)。コンビニでは週刊誌を手にとるようにもなった。20歳前後ではファッション雑誌を見ることが多かったが今ではめっきりなくなった。最後に大抵は本屋の隅にある、地球の歩き方に代表される国別の海外旅行関連本を具に眺めて、視線を横に移して国内旅行関連本の背表紙をざっとチェック。但し国内に関しては普通の旅をすることはもはやないので飽くまで或る地域の知識を補強するための参考程度で見ることが多い。

書店の性質ゆえに特に購買を意識せずとも本棚を巡るだけで心が満たされる。まだまだ関わりのない分野(例えば近代以前の美術、詩、教育、ミリタリーなど)も多く残されているので新しい分野を開拓していき、同時に例えばスポーツなら運動生理学や栄養学など一つの分野を深掘りするため、本屋全体を隈なくチェックしなければならないという圧力を勝手に感じている次第である。

純粋浪人→仮面浪人の移行において読書量は微増したのだが身分上大学受験のことを考えざるを得なかったので、読書経験の深さ・広さは限定的だった。仮面浪人→大学1年生の移行においては大学受験という数年の(無用の)鎖から解放されることで、読書量は激増し、また柔道とトレーニングを再開したり外出機会も多くなり、それに比例して好奇心に広がりが見られた。このような好奇心の広がりは本屋での歩き方にも影響を与えた。それまでの狭窄な視野は一気に開けた。さらに大学1年生→大学4年生では知識や経験値が自然と蓄積されていったのでその好奇心と視野の広がりは一層進展するようになった。大学1年生の頃は虚学の方が崇高に感じられため、本屋では社会科学や人文科学や語学など肩肘張った状態で読まねばならない本を中心に物色して購入することが多かったが、齢を重ねることでそこ(=書籍選び)に生活感が追加された。それに加えて、今ではネット上で幅広い分野のライトな話題も専門的な話題も広く浅く見るようにしているため、知的生活(精神生活)におけるバランス感覚が以前よりは醸成されるようになった。

社会人として働く、新しいコミュニティに所属する、何かを成し遂げるなど各ステージでの問題意識の変化・経験の蓄積によって、更に知的生活の領域が広がることを考えると、生きるという面倒くさいだけの行為に一縷の望みが見えた気がする。

俺の部屋にある本は既に本棚からあぶれていて、部屋が部屋としてまともに機能していないほどの量に達している。そこで少なくない幅をとる漫画の収納に着目し、漫画を電子化することで収納を容易する計画を立てている。本が紙であるメリットは、特定のページまでのアクセスの早さ=ページを繰ることや書き込みや視覚的な捉えやすさにある。そこまで真剣に読み込む必要のない紙媒体の漫画はその恩恵が差し引かれるので、漫画の場合は必ずしも紙媒体にこだわる必要はなく、場合に応じて適切な管理方法をとるべきだと感じる。

ただ電子書籍はレンタルサービスを利用しない限り、購入単価が500円前後と高く、また電子版に中古という概念もないので安く購入できない。また書店で購入した紙の本はどこで買っても交換可能な同じ製品であるが、電子書籍の場合はクラウド型のものが多くどのストアで購入したかで製品自体は異なる。これはこれで一つの端末に限定されないメリットを有しているのだが、ストア自体の数が多く沢山のプラットフォームが乱立しているためどれを選択すればよいか悩ましい。様々なストアを使いこなすより、一つのストアを極めたいという性格が増々問題を深刻化させている。ということでもう少し色々調べて行動に移そうかと考えている。

話は逸れるが、紙媒体より電子媒体の方が優れていると判断した日経新聞は、電子版に移行して1年半程度経っている。使いこなせているわけではないが利便性は紙より上だ。但し経済教室は紙媒体の方がなんとなく読みやすいし、切り抜いてコレクションにできる。日経新聞紙面ビューアーは何が利点なのか理解できないのでいまだ認めていない。