「ひとはなぜ服を着るのか」

ひとはなぜ服を着るのか (ちくま文庫)

ひとはなぜ服を着るのか (ちくま文庫)

4月8日読了。2013年32冊目。

論理とは別の精度を、感覚はもっている。同じものを前にしても異なる接し方をすることになる、独自の感覚のアンテナや感受性のスタイルを、である。…略…ひとはこうした感受性のモード(様相)を、センスだとかテイストと呼ぶ。今日、ファッションはそういう感受性のモードをひとびとのあいだでもっとも濃やかに確認する媒体となっている。あのひとの生き方、あのひとのふるまい方、あのひとの感覚…そう、ファッションとは生存と感受性のスタイルのことだ。(P253)

公示してよい身体と秘匿されねばならないプライヴェートな身体、加工してよい身体パーツといじってはならないパーツ、触れてよい他人の身体パーツと触れてはならないパーツ、それらの境界にわたしたちの規範意識が象徴的なかたちで記入されている。ファッションはそういう規範を身体に書き込んでいくいとなみでもある。(P280)