「夢の逃亡」

夢の逃亡 (新潮文庫 草 121-13)

夢の逃亡 (新潮文庫 草 121-13)

3月15日読了。2013年25冊目。
絶版。且つ希少なので入手時で既にヤケがすごかった。新潮文庫から出ている安部公房の作品は「石の眼」以外は12月にすべて揃えたという自慢風自慢。
観念的なテーマと内容でほぼついていけなかった。カンガルーノートやデンドロカカリヤと比べ物にならないほどに不条理。最初の3編は読んでいない。

例えば或る小説を説明するのに「この小説は〜ということをテーマに取り上げて〜を描写している、〜を主張している」というフォルムがある。学校の教科書で取り上げられている作品は特にそのように語られるものが多い。その押しつけがましさが僕は嫌いでひいて僕の小説嫌いに通じていた。しかしこの短編集は内容に具体性がない。虚実の境界線を区別するにはあまりにも曖昧である。それ故先に述べたフォルムははずされているわけだが、人間の頭の中の大半を占める何か混沌とした、雑駁な観念が言葉によって可視化され、論理とはまた違う次元で味わうことができた(ような気がする)。

安部公房の言う「良い投影体」は見つかったのだろうか。