「働くことがイヤな人のための本」

働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫)

働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫)

2月28日読了。2013年18冊目。
僕は本当に働きたくないと思っているが大学3年生になったらそんなことも言っていられないのでどう折り合いをつけようかというのが目下の難問である。出来れば死ぬまで大学生の夏休みの中でダラダラしていたい。

ほとんど毒がないどころか敬語すら使っていたので彼の本としては異色だった。架空の登場人物を設定し、各人との対話形式。前半は退屈だったが、彼の半生や無用塾の生徒や塾講師の同僚や塾長の話が出てくる後半は面白かった。

働くということはあらゆる理不尽を受け入れること。これは最近読んだ内田樹氏の本にも似たようなことが書いてあった。しかし理不尽を受け入れることで組織の中にいる人間を卑下するのではなく、そうしたことと幾らか折り合いをつけること、これが重要である。また仕事には能力の問題が付きまとう。しかし仕事の善し悪しと「よく生きること」は独立に存在しており、プロとして毅然とした態度で仕事に臨むこと、つまり生きることを常に優位しおいてその中で仕事を行うこと、この意味において仕事と「よく生きること」が接するのである。彼としては珍しく、そしてこの本の主題働くことと通底しているのだが、「よく生きること」とは何か?といことに言及しており、「死とは何かを問い続けること」ざっくりした答えとして与えている。

正直に白状すれば結局よく分からないが、文章のところどころは面白かった。

私は例えば王侯貴族たちのミイラが安直してあった極彩色の棺を見ると、なんとも言いようがなく悲しくなってくるのだ。永遠の生命を望む彼らの情念だけが、そしてその虚しさだけが強烈に伝わってくる。こうしたミイラにすがって死んでいくより、夜明けの露のように消えてしまった名もない庶民たちのほうがずっと潔いのではないか。死の不条理にそのままゆだねる美しさがあるのではないか。(P179)

これが僕すぎてワロタ。実際バイト探すときは、「楽しい職場」だけは絶対避けている。「みんなが楽しい」…恐ろしや。

社内広報のあらゆるページが、私にとって炎熱地獄のような光景なのである。みんな笑っている。みんな楽しそうである。肩を組んでハイキングをしている。運動会でパン食い競争をしている。社員寮では、ホールに集まってギターを弾いている。夏の保養施設、冬の山小屋、すべてが恐ろしい場所である。ああ、こうした生活がなければ、この会社に入るのだが…。(P118)