「菊次郎とさき」

菊次郎とさき (新潮文庫)

菊次郎とさき (新潮文庫)

10月13日読了。2012年80冊目。

人一倍プライドが高く見栄っ張りで家族には毒舌で厳格な教育ママである一方で、その分だけ子どものことが心配で心配で仕方ないさき。小心者で内弁慶であるが故に酒乱ながらも、不器用で面白おかしい菊次郎。僕の目から見ると、さきのような母親は絶滅危惧種に近いが、菊次郎のような父親や中年男性は今なおそこら中に健在である。威厳があり我々若者に恐れられている男が失敗やドジをした時その落差がそのまま面白さに出る、というのは21年間生きてきて散々経験してきたことだ。特に運動部に所属してた者ならよくあることだったと思う。この本を読んでノスタルジックな想いに駆られる人は多いと思うが、それは登場人物の人物像が個々人の体験に重ねられてその固有の記憶が想起されるからだと思う。