「非選抜アイドル」

非選抜アイドル (小学館１０１新書)

9月26日読了。夏休み42冊目。2012年72冊目。
ライターの手直しがあると思うが、根本的な発想や思考が、とても元不登校児で勉強を碌にしてこなかったアイドルとは思えないほどのキレ味。

1991年生まれと僕と同級生。前田敦子、柏木由紀、高橋みなみ、板野友美とAKB48で目立つのは1991年生まれが多い印象。このなかやんこと仲谷明香は、前田敦子と同じ中学に通い彼女がきっかけでAKB48に入った経緯がある。

この本で初めて知ったんだが、そもそもAKB48はアイドルとして成功するのが最終的な目的でなく、個々人がそれぞれ歌手や女優といった夢をかなえるための踏み台的な位置づけとしてメンバーに捉えられているらしい。彼女の場合はそれが声優であって、この本では、紆余曲折を経て声優としての仕事をもらうまでの経緯が書かれている。

彼女の考えていることは、努力すれば夢は叶うという努力本位主義ではなく、能力は先天的に決定されているという才能本位主義に根ざしたもので、アイドルの根幹だが自身にとって苦手で苦痛で克服しえない人気取りを戦略的に捨てて、公演やコンサートでのダンスや歌やトークの技術向上に打ち込んだ。そうした長期的で小さな積み重ねや経験は、思いもせず突如舞い込んだ声優としての仕事に結びつき、結果を残すことができた。

20歳にしては諦念が出すぎてて若さあふれる愚直な情熱みたいなものが感じられないという見方もあるが、一方で自己分析に長けていて自分の限界の枠内で努力を積み重ねるといった老成した性格が感じられるという見方もできる。