「外套・鼻」

外套・鼻 (岩波文庫)

外套・鼻 (岩波文庫)

8月21日読了。
ユーモアのある短編だった。なんとなくドストエフスキーに近いものを感じていたが、実際にドストエフスキーは「我々は皆ゴーゴリの『外套』から生まれ出でたのだ」と語ってたらしい。平井肇の翻訳は日本語の勉強になった。

・外套
書類を写す仕事を何年も続けた何のとりえもない下級官吏アカ―キイが、身を削って新しい外套を誂える。当初、アカ―キイは外套の新調を快く思っていなかったが、次第に外套の新調に熱心になり、つまらぬ日常の中で大きな意味を持つことになる。やがて出来上がった外套により、普段興味をもたれることのないアカ―キイは、同僚に祝福されるなど生活に充実感を得ることになる。しかしこの外套はすぐに悪党に奪われ、有力者に捜査を斡旋をしてもらうと懇願するも、強い語調で拒否される。遂にアカ―キイは寝込んだ後に死んでしまう。彼は亡霊となり自分に合う外套を奪うようになる。

「外套」の中に壮大なテーマを感じ取ることなくあっけなく読了した。ロシア文学の源流ともなるとやはり歴史的な名著なのだろうが、僕にそこまでの感受性がなかったことには悲嘆した。主人公の設定は割と好きだった。愛すべきアカ―キイ。

・鼻
ある日8等官コワリョフの顔から鼻が逃げ出す。「鼻」は5等官と持ち主であるコワリョフより官位が上である。コワリョフは自分の鼻を求めて奔走するが、ある日突然鼻が顔に戻る。原因も何も分からない。鼻が戻った後は全てが以前の日常に戻った。

体の一部が変化する、という点で安部公房を感じた。「鼻」が逃げ出すという複雑奇怪な出来事が起きているのにも関わらず、主人公コワリョフと美容室の男以外は、平然としているのが笑えた(funnyという意味で)。ちょっとしたコント。