「罪と罰」上巻

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

8月15日読了。

椎名林檎の「罪と罰」は高2から聞いているのだが、こちらの「罪と罰」はロシア文学デビュー。上巻だけで1週間かかった。人物は本当にややこしい。一人に対して2つか3つほどの呼称があり、なお且つ名前自体が長いので、僕は混乱した際には罪と罰の登場人物が掲載されているホームページでいちいち確認した。人名に躓く以外は情景描写も少なくて読み進めやすい方だと思う。というより同時読みしていた「冷たい水の羊」が読みにくかった。但し読みやすいと言っても大量の情報を頭に置いておかないと途中で混乱する。下巻はP601と上巻よりページ数は多いが文学の巨匠が事をどう展開させていくかは気になる。

現代の日本の生活とは大きく異なっていたので軽いカルチャーショックは受ける。しかし各人物の心理にはシンパシーを抱けるあたりが、世界的傑作と呼ばれる所以か。

主人公のラスコーリニコフは老婆を計画的に、その妹を意図とは別に殺害するが、第二の殺人が彼の心に重くのしかかる。普段鋭敏な脳を持ち、犯行中も理性的であろうとしたが、鍵の閉め忘れ等の失態を犯すことが原因で第二の殺人が偶発的に発生。P542あたりからドストエフスキーが本気を出してきたように思われる。〜P160くらいまでは殺人計画までの心の動き、〜P541くらいまではラスコーリニコフの殺人に対する心の動き、P542〜でラスコーリニコフが書いた犯罪に関する論文から、ラスコーリニコフの犯罪に関する考えが見えてくる。上巻におけるピークは明らかにここ。上巻まででラスコーリニコフの殺人に気づいていると思われる人物は、判事ポルフィーリィ・謎の町人(スヴィドーリガイロフか?)の二人と僕は判断した。

上巻ではラスコーリニコフの「罪」意識が重点的に表現されていて、「罰」の意識は少し見えてきた程度だ。下巻では「罰」の意識に着目したい。ババアだけを殺して妹を殺さなかった場合のラスコーリニコフの心理も気になるが、それは下巻を読み終えた後勝手に推測することにする。

ラスコーリニコフの思想。

第一の層、つまり生殖材料は、一般的に言うと、保守的で、行儀がよく、言われるままに生活し、服従するのが好きな人々です。…略…彼らは服従するのが義務なのです、…略…第二の層は、みな法律を犯しています、その能力から判断して、破壊者か、もしくはその傾向をもつ人々です。…略…彼らの大多数は、実にさまざまな形において、よりよきもののために現在あるものの破壊を要求しています。そして自分の思想のために、たとえ血を見、死骸をふみこえても進まねばならぬと、ぼくに言わせれば、ひそかに、良心にしたがって、血をふみこえる許可を自分にあたえるでしょう、…略…(P547-548)

第一の層=凡人、第二の層=非凡人。

「良心がある者は、あやまちを自覚したら、苦悩するでしょう。これがその男にくだされる罰ですよ、苦役以外のですね」(P556)

読書メーターにあった面白いレビュー。

非凡人になりたかった主人公。そして凡人であったが故の代償。共感。
(eastさん)