「インテリジェンス」

インテリジェンス―国家・組織は情報をいかに扱うべきか (ちくま学芸文庫)

インテリジェンス―国家・組織は情報をいかに扱うべきか (ちくま学芸文庫)

大学の友人に薦められた本。情報については勉強しようと思っていたこともあり購入を決めた。


インテリジェンスとは国家の知性である。外交や安全保障を考えると国家が情報を扱うということは国益のために非常に肝要である。国家が情報を扱う、というと一見単純に聞こえるが、実はこれには非常に複雑なプロセスや方法や目的が含蓄される。この複雑なインテリジェンスを適切に扱うために、各国はインテリジェンス・コミュニティを健全に機能させる必要がある。情報の収集に関する手段は公開情報・非公開情報に分けられ、非公開情報は人的情報・通信情報・画像情報に分類される。そこから得られた断片的な情報は分析・評価されるが、主体的なバイアスを排除して極力客観的で有意な情報を生み出すためには、マニュアル化された手法だけでなく、想像力や洞察力等のアート的な技術(才能)が必要になる。

インテリジェンスとは雑多な生の情報が分類・整理・分析されることで磨かれる有意な情報であり、その有意な情報は国家の政策として利用されるが、その際に政策サイドと情報サイドに軋轢が生じる。政策サイドは彼らに都合の良い情報を得ようとするため、両者の距離が近いと情報サイドが政策サイド寄りになる可能性があり、両者の距離が遠いと情報機関の意義が薄くなる可能性がある。

政策と情報の適度な距離というのは厄介な問題である。両者の間が遠すぎるとインテリジェンスが無視され、近すぎるとインテリジェンスが政治化されるという危険を常にはらんでいる。(P156)

また情報を利用するだけでは、問題は解決されない。情報は時として秘密として保全され、情報を扱う機関は監視されねばならない。情報は漏洩することで国益や関係者に損害を与えるため、スパイやハニートラップを避けて情報を保全せねばならないし、情報を扱う機関に対してはその暴走を防ぐために、行政府や立法府、また司法が監視せねばならない。

日本に目を向ける。日本は戦後アメリカの傘の下、急速な経済発展で先進国の仲間入りをしたが、これからの国際情勢を見据えると、取り残されていかないために情報を積極的に利用していかなければならない。近頃の日本もインテリジェンスへの対応が改善されてきているが、まだまだインテリジェンス・コミュニティの規模が非常に小さく、情報の保全に甘い。日本のインテリジェンスの質と量を向上させるために、国民全体のインテリジェンス・リテラシーを身につけていかねばならない。。

具体例が多すぎて少し読むのに手間・時間がかかったが、インテリジェンス関連の本は初めてだったので得たものは大きい。