「不道徳教育講座」

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

自分の中に眠る中二病を理性側から掘り起こす作業になった気がする。極端な節があるが別に真実を求めていないから笑って楽しむ読み方がベストだと感じた。まぁしかし三島由紀夫は相当頭がキレる人物だと思う。

要約は文章の構成上無理なのでフレーズだけを掲載する。

・うんとお節介を焼くべし

お節介焼きには、一つの長所があって、「人をいやがらせて、自らたのしむ」ことができ、しかも万古不易の正義感に乗っかって、それを安全に行使することができるのです。人をいつもいやがらせて、自分は少しも傷つかないという人の人生は永遠にバラ色です。なぜならお節介や忠告は、もっとも不道徳な快楽の一つだからです。(P55-56)

・ケチをモットーにすべし

倹約よりケチのほうが、はるかに近代的で、ユーモラスで、徹頭徹尾自分のためで、「人の世話にならぬ」という自主独立の精神のあらわれなのであります。(P183)

・人の失敗を笑うべし

世界を結ぶ環は、人類愛なんぞではなくて、むしろ無邪気な嘲りの哄笑だと私は思います。(P215)

・肉体のはかなさ

精神的教養というものが、すべての男に必要である程度に、肉体的教養は必要であって、健康な、キリリと締った肉体を持つことは、社会的礼儀だと考えている(P266)

・催眠術ばやり

責任などという重荷を捨てて、人の意のままに動きたいという奴隷化への欲望は、現代人の心のどこかに深くひそんでいます。一方では政治や芸術などの七面倒くさい技術や手続きを辿らずに、ただ人の目の前へ手をやって、「一、二、三、四…」と数えるだけで相手を眠らせ、相手を意のままにしようという考えは、忙しい、面倒くさがり屋の現代人にピッタリです。(P281)

なんだかんだ不道徳を銘打って、通俗的な考えを皮肉まじりに否定し、道徳的なことを語っている気がする。よって道徳の押しつけがましさを感じず、三島由紀夫と一緒に笑える。