「青の時代」

青の時代 (新潮文庫)

青の時代 (新潮文庫)

三島由紀夫は語彙と表現が豊富なので、とても日本語の勉強になるし、新しい概念を入手できる。電車の中でのみ読んだ。
本書は光クラブ事件が題材になっているらしい。光クラブ事件をモデルにした作品は多い。

主人公は一高→東大→東大教授という階梯を上ることを志し父親を侮蔑していた合理主義者・川崎誠。金融業者に騙された後、自ら金融会社を一高時代の友人である愛宕と共に設立する。一時的には成功したが結局裏切られて会社は危機的な状況に陥り、主人公自体も破滅に向かう。(文章自体に出てくることはなかったが)未来をがんがらめに規定して自由を束縛してきた合理主義者の人生は服毒自殺という形で幕を閉じることになる。

愛宕の思想は、自分が社会を所有しているのではなくて、社会が自分を所有しているという考え方だね。君は理解し理解される淫売だ。君は理解に身を委せ、また自分の理解に他人が身を委せることを要求する。君は近代社会の売淫性の権化なんだ。金と一緒に理解が通用する。堕落した時代だ。僕は金を楯にしてこの堕落から身を護ろうとした。金が理解し、金が口をきく以外に、人間同士は理解される義務もなく、理解する権利もない、そういうユートピアを僕は空想したんだ。君は不潔だ。なぜかというと君は僕を理解しようとする。」(P217)


ここまで理屈を駆使して生きてみたい憧憬も少なからずある。正直、主人公の道徳性や思想をあまり理解できなかったので、他の人のメモを参考にして消化不足を補いたい感はある。
三島由紀夫といえば「不道徳教育講座」も併読している(あと少しで読み終わる)が、こちらは結構面白いのでもう少しメモとして残せると思う。