「無関係な死・時の崖」

無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

無関係な死・時の崖 (新潮文庫)

安部公房は10冊目くらい。「壁」をはじめ捉えどころのない話が多いが、「なんか」好き。youtubeで見た安部公房の対談にすごく魅かれた経験もあるが、これについては以後述べたい。

・夢の兵士
1月に読んだのであまり覚えていない。
脱走兵と巡査の話。

・誘惑者
1月に読んだのであまり覚えていない。
常人と思われる描写をされていた男が最終的に狂人だった話で割りと面白かった覚えがある。

「そう、すべて自由意思だと思い込ませることが、なんと言っても一番の安全弁ですからね。」(P46)

・家
無力な祖先を処分する話。処分される祖先も充足感に満たされる。

・使者
同じく安部氏の作品である「人間そっくり」に非常に似ている。自称火星人の口が達者だった。オチがよく理解できなかった。

・透視図法
「現実」「盗み」「泣く女」の3部。
「現実」→老人曰く「夢のない奴は豚である。進歩がない。」孤独の裏返し?
「盗み」→貧乏人同士の依存。
「泣く女」→よく分からない。
透視図法という題名が意味不。

・賭
常識を超えたビルや企画をもつ会社に設計者が訪れる話だった。

「そうです…なんと言っても、潜在意識に働きかける宣伝が一番迫力がありますからね。そのためには、アイディアのほうも、無意識的にうみだされたものでなければ説得力がありません。」「つまり、この階段も、そういう心理学的な構造をもっているというわけなんですね?」(P147-P148)

「…(略)…現代の舵をにぎっているのは、われわれ宣伝業者なんだ…世論という雌馬と、資本という雄馬を、仲よくならべて走らせる方法を知っているのは、まずわれわれ以外にはないからな。」(P153)

創造→世論に欲望を植える→監視。これに適ったビルの設計?

・なわ
娘2人が協力して父を絞殺して、搾取的な従属から解放される。

「なわ」は、「棒」とならんで、もっとも古い人間の「道具」の一つだった。「棒」は、悪い空間を遠ざけるために、「なわ」は、善い空間を引きよせるために、人類が発明した、最初の友達だった。「なわ」と「棒」は、人間のいるところならば、どこにでもいた。(P196)

なわを使った娘たちの行動=善い空間の実現?

・無関係な死
帰宅後に見知らぬ客人がいた。彼は死んでいた。様々な選択肢を考慮してその無関係な死人を処理する話。文面を見る限り理性的に行動しているように見えるが、結局最も良いと思われる手段を選び最も悪い事態に陥っていった。

・人魚伝
未読。理由は「人魚は架空の生き物だろww」

・時の崖
ボクサーの試合中の頭の中を描写している。学生なら試験の最中によくある現象だが、スポーツの試合中にここまで考えた経験は僕はない。