「超マクロ展望 世界経済の真実」

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)

・覇権国が衰退すると実物経済から金融経済へ移行する傾向がある。

世界資本主義のヘゲモニーが移転していく中で、その都度生産拡大の局面があり、それが行き詰ると金融拡大の局面がある。またそのヘゲモニーは軍事力に付随したもので、陸の支配→海の支配(イギリス)→空の支配(アメリカ)と推移してきた。この空間の支配が資本主義世界のヘゲモニーに密接に関わるのは、単に軍事力による制圧という点だけでなく、新しいルールを確立する、という点が重要である。

主権国家を超えた、より大きなまとまりが世界統治を行っていく。

現行の覇権国であるアメリカで起きている金融空間の支配とその構造は、歴史的な覇権国の転換点と酷似しているが、ルール策定能力の問題等、複雑な要因が絡み合う現代、単に世界資本主義のヘゲモニーが全面的に他国に移行するとは考えにくい。実物経済のもとで利潤がもたらさせる場所とその利潤が集積・コントロールされる場所が分離する可能性が考えられる(たとえば前者が中国で後者がアメリカ)。この事態は国民と資本の分離を意味するので、今後は国民国家を単位とした国際秩序が成立しなくなる恐れがある。これはグローバル化の終局である。

・日本は近代化のスピードが速かった分、その限界に到達するのも早かった。

先進国総低成長時代を迎えた今、日本はどう生き抜くべきなのか。日本の現行の財政構造は経済成長を前提としたものだが、まずは歳入が伸びないことを前提とした予算編成を組むべきである。また消費財が隅々に浸透した現在は欲望を刺激するだけでは利益が得にくい。よって環境等の規制をかけることで新たな利益の回路を作りだすことが重要になってくる可能性があるので、そういった側面にも焦点を当てるのがよい。

経済も一歩踏み込めば、国家・軍事・歴史等たくさんの要因が絡まってきて難しくなるんだな、と思った。まぁ至極当然の話だが。