「フランスの外交力」

フランスの外交力 ―自主独立の伝統と戦略 (集英社新書)

フランスの外交力 ―自主独立の伝統と戦略 (集英社新書)

8月12日読了。2013年55冊目。夏休み4冊目。

最近フランスに興味が出てきたので。


フランス外交の歴史が戦後〜今まで解説されていた。
フランス外交の重要な要素に対米関係というものがある。例えば日本がアメリカに依存しているのは言わずもがな、イギリスもスエズ動乱(エジプトのスエズ運河国有化に反発して英仏イスラエルが派兵したことに端を発する戦争)での失敗以来、自国の国力の低下を認めアメリカとの同盟関係を強めた。しかしフランスは同じくスエズ動乱での失敗以後、アメリカと同等の勢力を作り上げることに不可能を感じ「ヨーロッパの中のフランス」を築いてアメリカ依存を脱しようとした。ドイツを封じ込めつつヨーロッパでの足場を築き、アフリカでの勢力圏の確保、世界への文化的な影響、核保有を背景とした強大な軍事力を用いて、自主独立の外交政策をとってきた。

フランスのドイツ封じ込め作戦についてだが、戦後は西ドイツがフランスにアピールするという意味も含めてフランスに対して譲歩した外交政策をとり、フランスが前輪、ドイツが後輪という形でヨーロッパの勢力図は進んでいった。経済大国であるが政治的に劣位にあるドイツ、そこを埋める形でフランスが存在していたので力は均衡していた。しかしベルリンの壁崩壊後は大ドイツの出現で力均衡が崩れる懸念があった。そこでフランスは共通通貨という接着剤でドイツをヨーロッパの中に繋ぎとめた。

政治学者シャリヨンによると主要国の外交は「放射型外交」「保護型外交」「妥協型外交」に分類できるが、自国の影響を他国に及ぼそうとする「放射型」に分類されるアメリカとフランスがライバル関係になることは当然である。しかしそうした関係の中でも、アメリカとつかず離れずの同盟関係を維持し、一方でヨーロッパ内において政治的主導権を握ろうとし、アフリカに影響を及ぼす多彩な外交政策によって、日本の人口の半分且つGDP4割程度のフランスの政治において自主独立が成立しているのである。

分かりやすい本だった。