「そもそも株式会社とは」

そもそも株式会社とは (ちくま新書)

そもそも株式会社とは (ちくま新書)

4月25日読了。2013年49冊目。

有名な経済学者である岩田規久男氏の本。株式会社の主権を誰に認めるか、また株主や正社員が主権となったりどのようなメリットが生じどのような問題点が生じるか、をバイアスなしで解説していてためになった。

従業員主権論が広く受け入れられている日本では株主主権論に対して否定的な反応が多く見られる。しかし日本における従業員主権は過剰投資・倒産時の従業員に対する優先的な分配に見られるように多少オーバーラン気味である。従業員と株主のリスクが健全に調整されるには、従業員が大株主になることが前提なのである。そこで株価上昇への誘因を作るストック・オプション制が提示され、デメリットに関してあまり言及されてなかったが、秀逸な案のように僕は感じた。一方、株主主権においては、会社特殊的人的資本への投資抑制とその影響による長期的な非効率性の可能性も孕んでいるが、そうした人的資本への投資も惜しまなければ、利害関係のない第三者が監視するというメリットの中で効率的に会社を経営することができるのである。