「少年犯罪」

新書080少年犯罪 (平凡社新書)

新書080少年犯罪 (平凡社新書)

4月19日読了。2013年40冊目。
明治期から現代にかけてまでの少年犯罪の歴史を社会的な背景と交えて解説。章ごとの結論が不明瞭であったため混乱したが後に見返す資料としては格好な本であると言える。


明治初期は明治維新の志士をに憧れ英雄視する「硬派」な不良少年が多く、法が整備され国力が増強された明治後期になるとよりプライヴェートで「軟派」な不良少年が増加した。大正時代に入ると、少年犯罪本が出版されて分析されたり、少年法が制定されて少年犯罪に対する関心が高まった。戦前昭和期は活動写真の盛隆や職業スポーツの熱狂が少年犯罪に大きく貢献していることが指摘され、戦時中に関しては昭和19、20年のデータがないため断片的な資料に依存することになるが、強姦・横領・詐欺の件数は減少し、強盗・窃盗・賭博は増加した。戦後昭和期は、経済的な困窮が理由というよりも、面白半分で犯罪を行ったり仲間内のヒロイズムに基づいた理由に起因する犯罪が見られるようになった。

昭和46年には「遊び型犯罪」なる犯罪が指摘され新しい傾向として認知されたが、このような傾向はこの命名の20年ほど前から見られていたので、むしろ遊び型犯罪は通時代的でありながらときどき新しい特徴として注目され強調されてきたものである、と言える。また昨今叫ばれている犯罪の「低年齢化」に関しても、窃盗に暗数(統計に表れない数字)が多いことを考えると、その時代の社会統制機関の方針の変化によってデータにも変化が生じる、と言える。また犯罪の一般化(=中流階級による犯罪の増加)も指摘されるようになったが、これも調査方法を変えたことに由来していると考えられる。以上まとめると、犯罪の○○化とは社会的な背景や制度の変化を鑑みなければ意味をなさない、ということになる。