「国防」
- 作者: 石破茂
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/07/28
- メディア: 文庫
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10月26日読了。2012年90冊目。
防衛庁長官の経験があり現安倍総裁下の自民党幹事長・石破氏が2005年に出した国防について書かれた本(文庫落ち)。日本の国防を具体的に論ずるというより、国防のなんたるかを国民に分かりやすく解説している。
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石破氏はマスコミを通じて軍事オタクとして知られている。しかしだからと言ってそれは彼が好戦的であることを意味しない。むしろ彼は、自衛隊の訓練や莫大な軍事費を投入することによって、日本への軍事的攻撃は国益にあまり繋がらないということを世界、特に敵対関係のある国に向けてアピールすることで、それが結果的に日本の防衛と戦争の抑止になる、という考えを持っており、それは単線的で単純な平和論や、国防や軍事を不謹慎なものとして思考することを停止してしまう屈折した平和論とは異なり、最も現実的に平和を達成できる可能性のある選択肢である。
現実的な平和実現を考えていないのは国民の側だけでなく、政治家の側でもまたそうである。経済政策や社会保障政策と異なり、防衛政策は票にならないので公の場で言及しないのだが、それだけでなく本当に無知であることが多い。それ故、有事の際に迅速で的確な行動や指示を起こせる法整備が整えられていない。
日本も核を持つべきだという核武装論が国内で唱えられることがあるが、石破氏はこれに関しては反対である。核を保有することで軍事的な均衡が働いて、結果的にそれが抑止力となるからだ、という論理はよく知られている。しかし石破氏は核武装だけが抑止力の方法ではないと言い、MD(ミサイル防衛、弾道ミサイルを迎撃する防衛システム)を核戦争の抑止力として挙げる。これによりミサイル迎撃の精度を上げて、相手の核を用いるインセンティブをなくすことが期待できる。また日本が仮に核兵器を持つとなると、その他の国もドミノのように核保有の流れに乗る可能性があり、北朝鮮が核兵器を持ってはいけないという根拠も失ってしまうのである。
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核戦争抑止のためにMDが持ち出されていたが、この可能性を巡った議論をいつかどっかで読みたい。