「文豪ナビ 三島由紀夫」

文豪ナビ 三島由紀夫 (新潮文庫)

文豪ナビ 三島由紀夫 (新潮文庫)

10月18日読了。2012年84冊目。
三島由紀夫の作品群の読み進め方、作品群の特徴、そこから見える三島由紀夫という人物について考察した本で、具体的には三島作品の概観・10分で読める要約・三島由紀夫という人物について・声に出して読みたい名文から成っている。

要約されている作品は「仮面の告白」「金閣寺」「春の雪」で、豊饒の海4巻は1年生の読書生活の締めとして読みたいので「春の雪」は読んでいない。「仮面の告白」は確か昨年の6月、仮面浪人として始動する前に読んだが記憶から薄れていたので数ページの要約で確認できてよかった。「金閣寺」の要約はまさに読了直後読んだ。

三島由紀夫の人物については3人の作家・評論家が考察をしていた。そのうちの2人は「三島由紀夫は小説だけでなく、彼自身の人生もシナリオを想定して周到に描いていった」と評している。

あともう一つ面白い考察。

過剰に狂おしいがゆえに、明晰にならざるを得ない。狂おしいからこそ、終末を予感し、破滅衝動にかられざるを得ない。狂おしいからこそ、いたずらに行動的にならざるを得ない。幾つもの「狂おしさ」が、長い間、この作家を苛み続けたのだが、作家は敢然と自らの「狂おしさ」に立ち向かって、能動的にニヒリズムの極致を生き抜いた。(P78)

私たちが生きる現代社会は、そうした無垢な狂おしさを滑稽なものとみなそうとする。無用なものだとして、あからさまに嘲笑しようとする。精神の狂おしさを失うことは、精神そのものを失うことにもなりかねないのに、多くの人がそれを隠蔽しようと試みて、狂おしさとは無縁のところで生きているふりをし続ける。三島由紀夫は、私たちが忘れかけている精神の狂おしさを衝撃的な生き方で提示し、且つ、自身の作品に十全残した。(P80)