「社畜のススメ」

社畜のススメ (新潮新書)

社畜のススメ (新潮新書)

9月1日読了。夏休み17冊目。
浮世離れした生活もアレなので少しは実用書的なものでも読んで世間に接点を持とうとして選んだ本である。

1%の天才型ではなく99%の凡人に向けた本。「自分らしく」「個性的」で溢れた世の中の風潮に対するアンチテーゼ。


まず「個性を大事にしろ」「自分らしく生きろ」「自分で考えろ」「会社の歯車になるな」といった世間に膾炙しているこの言葉をサラリーマンの四大タブーとして位置づける。

武道において用いられる「守・破・離」という技芸上達についての言葉でサラリーマンとしてあるべき成長過程を示すことができる。本書の文脈に合わせれば、「守」とは知識カードを蓄える段階、「破」とはその血肉化した知識カードを自分の想像力や個性と組み合わせて実践で活用する段階、「離」は形に囚われず自由にやる段階であり、自己啓発本やビジネス書を著している所謂成功者もこの枠からはみ出ない。

基礎知識も卓越した才能もない若手サラリーマンの独善的な言動は「個性」や「独創」ではなく「孤性」である。「社畜」経験の中で会社の歯車となり、ノウハウや実地経験を積み上げることで初めて「個性」ある我流が形成される。

要はある程度会社に服従して基礎的で広汎な経験を積み上げないと「使える個性」は形成されない、ということ。オリジナルを創出するならまず既存の知識を詰めろ、みたいな。斬新さはなく当たり前のことを主張しているだけで、思考が0か100に偏る場合に読んだらよい本だと思った。