「外套・鼻」
- 作者: ゴーゴリ,平井肇
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/02/16
- メディア: 文庫
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8月21日読了。
ユーモアのある短編だった。なんとなくドストエフスキーに近いものを感じていたが、実際にドストエフスキーは「我々は皆ゴーゴリの『外套』から生まれ出でたのだ」と語ってたらしい。平井肇の翻訳は日本語の勉強になった。
・外套
書類を写す仕事を何年も続けた何のとりえもない下級官吏アカ―キイが、身を削って新しい外套を誂える。当初、アカ―キイは外套の新調を快く思っていなかったが、次第に外套の新調に熱心になり、つまらぬ日常の中で大きな意味を持つことになる。やがて出来上がった外套により、普段興味をもたれることのないアカ―キイは、同僚に祝福されるなど生活に充実感を得ることになる。しかしこの外套はすぐに悪党に奪われ、有力者に捜査を斡旋をしてもらうと懇願するも、強い語調で拒否される。遂にアカ―キイは寝込んだ後に死んでしまう。彼は亡霊となり自分に合う外套を奪うようになる。
「外套」の中に壮大なテーマを感じ取ることなくあっけなく読了した。ロシア文学の源流ともなるとやはり歴史的な名著なのだろうが、僕にそこまでの感受性がなかったことには悲嘆した。主人公の設定は割と好きだった。愛すべきアカ―キイ。
・鼻
ある日8等官コワリョフの顔から鼻が逃げ出す。「鼻」は5等官と持ち主であるコワリョフより官位が上である。コワリョフは自分の鼻を求めて奔走するが、ある日突然鼻が顔に戻る。原因も何も分からない。鼻が戻った後は全てが以前の日常に戻った。
体の一部が変化する、という点で安部公房を感じた。「鼻」が逃げ出すという複雑奇怪な出来事が起きているのにも関わらず、主人公コワリョフと美容室の男以外は、平然としているのが笑えた(funnyという意味で)。ちょっとしたコント。
うゑの2〜東京国立博物館編〜
この上野紀行は前日まで遡ることができる。
8月20日13時30分頃、僕は目覚めると同時に悔恨の念で満たされた。予定では7時半に起床し9時半に家を出て10時半に新橋駅に到着し、その後オリンピックのパレードを楽しんでいたはずである。その前の日の柔道の試合の疲労を考えたら仕様が無いと割り切ることができたが、この後悔は一層翌日の外出への情熱を掻き立てた。
今日は11時半起床。美術館・博物館に行こうと思っていたのでとりあえずその系統が充実している上野へと旅立つ。先週の日曜日ぶりだ。今回の旅のお伴は「カフカ短篇集」。ロシア文学2作品で疲労した後のドイツ文学である。
電車移動ではカフカ短篇集の「流刑地」に悩まされた。「変身」と比べてここに収録されている短編は全体的にシュールすぎる。
13時半頃上野に到着する。先週の日曜日に断念した東京国立博物館へ向かう。この写真の空が幻想的で綺麗。奥に聳え立っている建物が東京国立博物館。
今季における東京国立博物館の特別展は「青山杉雨の眼と書」である。入場料1100円を払い平成館へ。写真の晴天が素晴らしい。
中国の書→絵画→青山杉雨の作品集→文房具(主に書道の)→書斎→写真展という構造で、青山が蒐集していた中国の作品は主に宋〜清のものだった。僕はよく作品の解説を読むのだが、書に関しての解説は「創造の可能性を表現」「教養主義の実践」等の抽象的な記述が多かったため、西洋美術展「ベルリン」の時と比較して理解はあまり進まなかった。絵画は素晴らしい。青山の作品だが、これも書に関してはよく分からず、というのが率直な感想。日本美術史的に斬新なことを成し遂げたのは分かるが、そっち方面の教養が皆無なのが原因で作品分析を深化できず。但し展示の中である興味深い考察が出来た。作品には難しい漢熟語が(例えば「麦秀」「澹如」等」)用いられているが、その英語訳だ。「麦秀」→「Wheat in Glorious Green」、「澹如」→「Non-attachment in All Things」、「猿声」→「Monkey's Cry」など挙げたらきりがない。「秀」が「Glorious Green」、「声」が「Cry」にニュアンスとして出ているなどして作品のニュアンスを汲み取る作業が地味に面白かった。表意文字スゲーナーってなった。また終盤になると書道の道具や書斎が展示されていたが、これが一番感動した。「自分の感性を刺激する文房具を使用すれば勉強の意欲もそれに比例して高まる」という思想を僕は持っているが、書道具の展示を見て、一層、経済的コストを犠牲にしてもよい文房具を使っていこうという気になった。書斎は僕の語彙で語りきるのはとても無理だが、ざっくり表現すると、荘厳であった。
続いて考古展示。縄文時代〜平安時代。受験では日本史も選択していたため文化史の知識はあったが直接見る機会はなかった。古墳時代の甲冑が一番印象に残った。写真は家形埴輪。他は上手く撮影できず載せる気にならない。
制服姿のJCが多くて興h
平成館で「青山杉雨の眼と書」と「考古展示」を見終えると連絡通路で本館へ。本館は主に日本美術の展示をしている。写真撮影が原則的にOKなのでテンションが少し上がる。この写真は1枚目の写真で写っている正面の建物。
正面から入ってすぐの階段の作りが駒場1号館のそれに似ている。写真に写っている私服JKが結構かわいかった。
四天王立像。12世紀平安時代。
源氏物語蒔絵源氏源氏箪笥。17〜18世紀江戸時代。
阿弥陀如来坐像。12〜13世紀鎌倉時代。右上の壁が途切れているところが写ってて写真のクオリティが一気に下がって萎えた。
このあたりで疲れて眠くなってきたので、展示品を巻きで見るという愚行を犯した。3時間は東京国立博物館にいたので満足し退館。
お土産。ポストカード2枚(「開眼」と「田舎讀書園?」)とクリアファイル(「春望」)。
※散歩編に続く。