「就活エリートの迷走」

就活エリートの迷走 (ちくま新書)

就活エリートの迷走 (ちくま新書)

10月6日読了。夏休み46冊目。2012年76冊目。
10月に入って将来をどうするかについて逡巡しているのでこの手の本に目がいってしまう。一応公務員も民間も視野に入っているので。筆者は東大理学部卒と理系出身なのでなんとなく信頼できるという偏見。現代若者行動特性論が40%くらい。


就活生はピラミッド型の頂上から「ハイパー大学生」「就活エリート層」「就活漂流層」「就活諦観層」の4つに分類できる。本書では勉学や交友関係は勿論、サークルやアルバイトやボランティアなどを合理的効率的に処理し、就職活動もゲームとして戦略的に攻略して、大企業や人気企業から内定をもらう「就活エリート層」が取り扱われている。

「非日常×主観」という面接の場でそうしたエリート就活生は異口同音にやりたいことや理念・ビジョンを企業側に提示し自己アピールをする。彼らは日常生活で駆使している場当たり的で表面的な「コミュ力」で面接を乗り切るため、安定したアイデンティティを確立することなく社会人生活に踏み出すことになる。しかし自分の描いたキャリア・デザイン=「ゴール志向」が強すぎるため、不安定なアイデンティティと相まって、現実とのギャップに耐えきれず、精神的に打撃を受けるケース(例えば新型うつ)が少なくない。

こうしたミクロ的な問題は日本式の画一化された就活制度に端を発する。対策本の充実や若者の場当たり的なコミュニケーションの技術向上により、面接では企業の求めている人材を見抜くことが困難になってきている。そこで面接だけに(非日常×主観型)に固執せず採用選考ポートフォリオの多様化(「日常×主観」「日常×客観」「非日常×主観」「非日常×客観」)により、総体的に人物を見抜いて発掘したり、企業と学生の機会損失を回避するため就活シーズンの増幅したり、現行就活制度を改革することで、企業と学生、或いは学生の思い描く理想と現実のギャップを埋め合わせることができるのではないか。